こんにちは!三木照久歯科、院長の三木照久です。
ご相談の件ですが...まず「大人のお口の病気は、痛くないことの方が多い」、ということをご理解ください。
これは、歯科的な話に限りません。ふと考えてみていただくと、スッとご理解いただけるかと思いますが...「自覚では痛くもしんどくも何ともないが、健康診断や人間ドックで体の悪いところを指摘される」...特に40代以上になってくると、多くの方が経験されることではないでしょうか。
例えば、口の中にできる癌の一つ...扁平上皮癌などは、「口内炎と思っていたが痛くなかったため放置していた。しかし何カ月(または何年)も治らないし、前より大きくなってきてるので、一応診てもらいに来た。」こう言った場合に発見されることが多くあり、実は上記の文章は、「この主訴から推測される病変は何か?」という形で、歯科医師国家試験にしばしば出題される...歯科医師のみならず、歯科大生でも「その一つは、扁平上皮癌だろう」と即答できる問題であります。
誤解のないように、念のため申し上げますが...上記は、「痛くなくても病気ということは、いくらでもあり、それを見過ごす、見逃すことは、時に重篤な事態を招く」ということについてご理解いただくために、ご質問の回答兼ねてのお話で...もちろん今回のご質問は、癌等の「悪性新生物」ではなく、膿ですから「感染症」ですね。
「神経ではないところの穴に溜まった膿」には、いくつか原因と考えられるものがあります。
歯の中の、神経の通っているパイプ(歯髄腔と言います)の「幹」の部分ではなく、極めて治療のしにくい、細い「枝」の部分から感染が拡がる場合。
歯周病や虫歯が進行して、歯ブラシが入らず歯磨きの行き届かない、歯の根の股の深い部分、骨の深部に感染が波及している場合。
何らかの理由...虫歯の進行等で、歯の根が折れている場合。
代表的なことだけでも、これだけの可能性が考えられます。
そして、これらの場合のいずれも、条件が揃えば、抜歯の適応となります。ゆえに...拝見しておりませんので断言はできませんが...診てくださってる先生の勧められる、抜歯→インプラントという治療は、選択肢として適切である可能性は高いと推測されます。
今回のご相談は、癌ではないわけですが...ご相談頂いた部位の病変を放置した場合、上顎洞炎という病気になることがよくあり、上顎洞炎は、上顎洞癌に移行するリスクの高い病気とされています。そうなる前に痛みその他自覚症状が出て、治療を受けられればまだ不幸中の幸いで、自覚症状が出ないまま、病魔が拡がることの方が、より恐ろしいことになります。
インプラント以外に、歯を失った部分の機能回復を行うには、俗に言う入れ歯、という方法もあります。これにも、コストが安く、オペがいらないというメリットもあります。反面、デメリットも多いですが...
インプラント、入れ歯、それぞれのメリットとデメリットを、診てくださってる先生と相談され、ご自分の価値観に合い、後悔のない選択肢を、よくよくお考えになることをお勧めします。
お口の病気、特に感染性のそれらが、歯科医師との二人三脚なしでは不可逆性(水を加熱すればお湯になるが、冷ませば水に戻る、こういった現象が可逆性。パンをトースターで加熱し過ぎて焦げたら、冷ましても焦げたまま、これが不可逆性です)の経過を辿ることが多い病変です。
いまの状態を推察すると、被せ直すだけの治療(とは呼べない、いわば治療類似行為)では、極端な例えをすると、「焦げ続けてるパンを、火事になるまで放置する」...そうなりかねません。できるだけ早く、治療を受けられた方がよいと思われます。
では、本当にお大事になさってくださいね。 |