こんにちは!三木照久歯科、院長の三木照久です。
あなた様のお気持ちはよく分かります。親知らずに限らず、もっと言えば抜歯に限らず、歯は抜いたり削ったりすると、もう二度と元に戻らない、大切な「からだの宝物」の1つです。処置の必要性を納得されたいというのは、当然のことだと思います。
ちょっとご質問への直接の回答をさせていただく前に、「親知らずって、なんで抜かなくちゃならないことが多いの?」というお話をさせていただいてもよろしいでしょうかね?(私の方こそ、お話が長くなってごめんなさい。)ご面倒でしたら、途中はサラッと読み飛ばしてくださいね。
親知らずというのは、前歯(まえば)とか奥歯(おくば)とかいう言葉と同じ、歯の俗称ですよね。当然、けして病気の名前ではありません。ところが、あなた様の通ってらっしゃる先生のおっしゃるように、虫歯をはじめ、様々な悪影響をお口の中にもたらしがちな歯であることが多いので、まるで「親知らず=病気」のように、歯医者さんに「抜こう、抜こう」と言われるのです。
大昔の人のあごの骨は現代人よりも大きく、口の中では、親知らずはしっかりと上下ともまっすぐに生え、噛むという役割をちゃんと果たしていました。食べ物が硬かったからです。ところが現代、食べ物はどんどんやわらかいものが多くなり、噛むという仕事にあま
り力を要しなくなりました。
その影響で、現代人のあごの骨は退化して小さくなってきているのですが、歯の本数の退化が、あごの退化にまだ追いついていないのです。その昔の名残りの1つが、親知らずです。
親知らずは、上下左右4本とも生えてこなかったり、あなた様のように3本だったり1、2本の方もいらっしゃいますが、いずれにしろ生えてくるとすれば通常一番最後です。
親知らずは、生えてくるべきスペースを失った現代人の口の中に生えてこようとするので、途中でつまって骨の中に埋まったままになったり、生えてきても正常な向きや位置でなかったり、また奇形の歯である場合もあります。
歯という組織は、上下の歯がコンビを組んでこそ噛むという仕事を果たします。ところが親知らずは、上下どちらかの相棒が生えてこなかったり、上下生えてきてもその位置が不適当で、そっぽを向き合っていたり、歯の形が異常であったりするために、その役割をまっとうできないことが多いのです。
そしてそれらのことが、親知らずそのものや、その周囲の歯や歯茎、骨に病気を作ってしまう原因になってしまいがちです。また、あまり役割を果たさない歯で、患者さんへの負担も考えて、お口の中にとどめておく治療よりも、むしろその後の心配が解消される抜歯が選択されてしまうのです。
親知らずが原因で起こりうる病気の例を挙げるならば、
1:上は生えてきたけれど、下が生えてこなかった、または向きが異常だったために、下の歯茎を噛んでしまう
2:歯は噛むことで、食べ物を潰すだけではなく、同時に周囲に押し出すことで、ある程度セルフでお掃除をしています。これを自浄性と言いますが、向きや形がよくないためにうまくかみ合わず、自浄性が不十分で、虫歯になりがち
3:奥の、スペースのない、歯ブラシの入りにくい場所にあり、歯磨きがうまくできず、虫歯や局所的な歯周病を発生させてしまう
4:親知らずがあるために、それが周囲の歯磨きの邪魔になり、その手前の歯や周囲の骨まで虫歯や歯周病になってしまうなどがあります。
さて、本当に前置きが長くなって申し訳ありません。
お口を直接拝見しておりませんので、断定はできませんが、あなた様のケースで、親知らずが直接的な原因で、これからかみ合わせへの悪影響がでてくることは、可能性は低いと思われます。
しかしながら、診られた先生のご説明を読ませていただいたところでは、例に記したような病気が出てきそう、またはすでに出始めているように思われます。もしそうなら、あまり歯としての機能を果たさない親知らずを残しておくために、歯磨きにすごくお手間がかかったり、治療に時間や費用をついやしたりするよりも、抜歯を選択されたほうが、長い目でみればあなた様のお口のトータルの健康のためにはよいとは考えられます。
まずは現状を、受診されている先生によくお聞きになってみてください。あなた様の親知らずが、「抜かなくても、悪くならない可能性もある状態」なのか、「いま抜いてもらっておいたほうがいい状態」なのか、「今すぐ抜かなくてはならない状態」なのか。抜かないと、歯のお手入れに関して、どういう注意が必要で、どんなリスクが生じそうなのか。そういった事柄をご理解されたうえで、ご自身が方針を選択されるのが、一番よいと私は考えます。
では、本当にお大事になさってくださいね。長くて読みづらいお返事になってごめんなさい。ご参考になれば幸いです。
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